【das Grau -ハイイロ-】
作者:スパロゥさん
進行:第2話まで


実は第一話からプレイしていた撃鉄現代編の連載シナリオ。
ミリタリー色が強い現代編において、先だって連載中の【万屋レクター】を
『異色作』とするならば、こちらは『正統派』の作品。
もちろんその辺はシナリオの傾向で面白さとは別の話ですが、
連載モノでこのタイプが出るのは企画的に理想の流れでもあります。




シナリオ−全体:

雰囲気的には氏の前作『機動戦車レオ』と同様、
ハードな組織(舞台)でライトなかけあい(役者)という、パトレイバーチックな感覚の作品。
舞台の雰囲気作りに欠かせないミリタリーな単語も、補足用のウィンドウを配置し表示する事で
会話内で説明する必要がなくなり、『レオ』であった若干のセリフの不自然さが解消されてる。
演出面も大幅強化で、パラでの降下など作中での表現や、命令文書風の勝利条件表示など見所多し。
要するに、徹底的にミリタリーという舞台づくりを心がけてるのが特徴。
氏の豊富な知識も相まって、キャラクター達が動く土台の完成度は実に高い。
しかし、一方のキャラクターに関しては気になる点もちらほらと。


シナリオ−2話分:

今回はハリーを中心とした若き小隊員達の絆をクローズアップしたお話。
密かに誕生日パーティを企画するってのはベタだけど、舞台が舞台だけに結構新鮮。
一方で、彼らの私語のせいで中隊長から大目玉を食らったキーラ小隊長はご立腹。
投下前のハリーに厳しい言葉を投げかける。
彼らは単なる仲良しクラブなのか? 軍人と責務を果たす気概はあるか? ……ってのが話の流れ。


大筋としてみれば彼らの絆はしっかりと表現されていたし、
人質を取られた状態からプロとしての技量と着眼で狙撃を完遂するローザさん、っていう鮮やかな逆転も心地いい。
けれどどこか、軍という舞台で彼らの存在が不自然に感じられてしまう。


戦闘機に張り付かれた状態で必ずパイロット達を下ろそうと試みる熱い機長。
一方で完全に泣きが入った副機長(?)。


学生気分でいるんじゃない、とハリーに釘を刺したキーラさん。彼を人質に取られ立ちすくむ。
士官学校出たての新米だし、口ではああいっても狼狽は当然……だけどそれにしたって……な反応。


今際の際で格好いい人と格好悪い人の両極端で、普通の軍人が見当たらない。
そんな中でハリー達に問われた『軍人としての姿』ってのがぼやけてる印象がありました。
もうちょっと具体的に言えば、彼らと(作中内での)普通の軍人ってどこが違うの、というか、
異質が異質として表現されきってないというか……。


総括:

より一層完成度を増した舞台に対して、若干キャラクターがライト過ぎるというかなんというか。
彼ら個々人だけを見れば決して嫌いじゃないんだけど、レオで魅せた『舞台と役者』絶妙なアンバランス加減が
どこか崩れてしまってる感覚も同時に覚えたり。
勿論、まだ二話目なのでそう判断するのは早計かもしれませんが。
何はともあれ、謎の組織の登場など話が徐々に動き出しそうな気配はしているので、
ここから軍人としてのグリュン20の面々を、その異質さも含めて巧く表現していって欲しいですね。