【勇者聖凰ブレイガード】
製作者:紅蓮の桜さん
進行:〜最終話まで


休日+ハイテンション+名作=駆け抜けた18話!!
っていうか以前のレビューの時もこのパターンだよ! どんだけだよ!
そんなシナリオ耐久プレイ企画選抜シナリオ。SRCに燦然と輝く王道の勇者ロボ物。
もう3年も前の作品が、なぜここまで人をひきつけるのか?
二度も、そして企画の一員としてやるからには、前もってお伝えした通りガチレビュー。
無礼、棚上げ、そしていつも以上に無茶な長さなので閲覧注意。




まず、先も述べたとおり本作は王道の勇者ロボ物。
なんにでも言える事ですが、著名なジャンルには固定化されたシナリオ運びが存在します。
特撮モノなら改造される、などが最たる例ですね。
よって序盤の展開は基本的に原義に沿いつつ、どれだけ特色を加えるかが肝となります。
さて、そこでブレイガードにおいては、主役に10代後半の女の子を起用したり、
あるいは豊富なカットイン画像で差別化を図っている。
前者は恐らくこのジャンルに馴染み深い人達にとってはちょっとしたサプライズでしょうし、
後者に至っては当然可能なライターは限られます。
ちょっとしたアイディアと、作者さんの持ち味の両方をうまく生かしてるんじゃないでしょうか?
その上で話の筋は堅実に。日常描写に手を抜かず、非日常を際立たせる。
また序盤は敵味方共に相手の正体が不明なままある程度話数を重ねていくわけですが、
そうした展開の遅さは新キャラクターの投入や主人公聖の描写、その伏線を張る事でカバー出来てると思います。
一方でそうした策のパターン化によって生まれる弊害も存在します。
特に聖関連はかなりの生殺し。毎回それらしい描写が挟まれるが深入りは当分先なので、
後々の事を考えると序盤の彼女の暗い内面描写は全部取っ払って、
あくまでテンプレートな正義のヒーローで押し通すべきだったんじゃないでしょうか。
過去に触れずともキャラ的に魅力は十分に出てたし。


兎にも角にも役者がそろい、条件が整い、本格的に話が加速するのは7話以降。
個人的にはブレイガードの本分ってここからの流れ、ひいては紅蓮さんのスキルアップにあると思うんです。
それまでは個々のエピソードにムラがあるというか、安定しないというか。
例えばポスドラゴンとそこから生まれたディザスの葛藤なんかは話運び巧いなぁと感心する一方で
前述の理由も含めて、「これが今回のエピソードの芯か?」→「そう、だよね?」と、
肩透かしを食らう事もあったんですが、7話以降は本当に各話安定した完成度で、
ターニングポイントの13話に至るまでの登場人物達の葛藤、
そしてそれを克服してさらに先へと進んでいく、まさしく王道の流れが物凄いパワーで伝わってくる。
ちらほら見られたシステム面に関しての粗、例えば一行表示のTalkによるテンポの悪さなど
そうした欠点も一つ一つ改善され、まるでモノが変わっていく様子もまた嬉しい。


そして、着実にレベルアップを重ねた末に描かれた最終話。
ここでついに、プレイヤーに作品の明確なテーマを見事に突きつける。
ええと、酷くえらそうな話、まだプロット的に拙い点も見られるんですよ。
勿論現在の作者氏の実力ではありませんが。
洒脱な会話、絶妙な構成とはいきません。それでも刺さります。ええグッサリ突きつけられます。
何故かって、そこまでの17話かけてここで提示した事を全力でプレイヤーに見せつけているから。
上記の技術はあくまで方法、見せつける事ができるかどうかが本当の意味でベタと王道の境目かと。
そんな紅蓮の桜さんの全力を、こちらも全力で受け止めた末に用意された結末。
あーだこーだと理詰めもどきを繰り広げましたが、ここだけは一度目の感想と同様。
結末知ってるし、二度目だし……と思ってましたがやっぱダメだー。
冗談抜きに目頭がやばかった、そんな耐久プレイの果てでした。



以下キャラクター考察。


真田聖:
冒頭からいかにもヒーロー然とした登場。その行動はまさしく正義の味方。
自身を大雑把と評しており、確かにその通りではあるのだけれど、
話を追っていくにつれ、そうならざるを得ない理由が提示されていく。
改めて高校生という年齢設定は妥当でしょうね。
彼女の劇中での役回りをこれ以上年下の子にやらせるワケにはいきません。
でもそれにしたってまな板はあんまりだ、と思ったのは一度目二度目共通のアレ。


ブレイ:
忘れちゃいけない勇者ロボ。正の感情の集合体たる聖獣。
聖の戦う力その物であるが、同時にマスコットもこなせてしまう万能ぶり。真面目天然。
彼のネガティブな発言を聖が覆す、というお約束の役割も担っている。
そんな彼がいるからこそ、「徐々に削れていってしまう聖」が際立つんですが。
しかして13話を境にどんどん成長。最終話の彼の慟哭こそがブレイガードの肝と信じて疑わず。
要するに、うん、お父さん交際認めるよ。太鼓判だよ。


佐上翔子、高間潤、七箕怜治:
それぞれ聖の新しい友達、中学からの友人、幼馴染。
キャラクターとしての個性の違いもさる事ながら、友人になった時期はそれぞれ違うんですよね。
聖の日常の象徴であると同時に、彼女の足跡としての役割も与えられるわけで、
三者三様、自ずと違う視点を設定できてたように思えますが、ちょっと生かしきれなかったか。
ただ三人とも色々と美味しいポジションにいるわけで、っていうかお前ら何くっついてんだって言いたいわけで。
怜治は聖とかー、なんて最初は思ったもんですが、とんでもないライバルがいたししょうがない。
特に佐上さんはお姉さんのアドバイス後急速に成長していった一人でしょう。
最終話にて髪を伸ばした聖と落とした彼女の対比は結構考察のしようがありそう。
……ああ、そういえば潤もばっさり行ってましたがそれはまぁ、うん。


ディザス&ブラックナイト:
第一話からの付き合いとなる邪霊の人とその相棒。
両者ともに『物凄い悪役』という感じもではなく、特にディザスはトリックスターの言葉がピタリ。
聖との初対面後コメディタッチも増えていき、それに比例して人間味が増していく。
言動、最期その他もろもろ、普通なら主役を食う勢いの二人なんだけれどもそうは感じない。
その辺はやはりシナリオ自体が彼らの立ち回りに見合う輝きを見せてくれたからでしょうね。
どちらにせよ、テーマに沿う形でそれぞれブレイ、聖の成長を促したMVPでしょう。
プレイヤー的にも、そして何よりマイヤー的にも。ディザスはブラックナイトの嫁。


メア→バロウズ
上の二人とは打って変わって本格派悪役。
いやーな奴らなんだけれども、それでもやはりシナリオになくてはならない存在。
どちらも正しく悪の権化なわけですが、メアが『壮大な大量破壊』を行い続けたのに対し、
彼女から生まれたバロウズは『聖への復讐』その一点に目的を絞る。
規模は小さくとも、間違いなくラスボスでしょう。
それでも登場の仕方がぽっと出に感じられたのは、
そこまで毎回の様に挟まれた聖の内面描写に続く形だったせいか。
まぁごく自然にシフトしていると考えれば決して外しちゃいないんですが、
メリハリという意味では多少肩を透かされた感も。


戦闘:
こちらも序盤は力押しだが、物語が進むにつれて洗練されていく。
とはいえ本質的には味方サイドの強さを見せつける以上のものではなく、
時折用意されるボーナス条件で頭を使う程度か。
ただ、個人的にはたった一枚のマップであれだけ戦闘のシチュエーションを用意したのに脱帽。
そしてもうひとつ、最終話での徐々に武装が増えていく演出ったらもう、アドレナリンどっぱどぱです。



総括:
というわけで、二度目のプレイも電光石火のごとく駆け抜けたわけですが。
最終話を終えてみて気づいてみればなんというか、
初回プレイのときに抱いた感想、ひいては僕の中でこのシナリオの前提が崩れてました。
冒頭であんな事言ったがすまんありゃ嘘だった。


これ、勇者シリーズじゃないです。



いや、まぁツッコミどころでしょうがここは全力で主張。
プレイした方はもちろん、他ならぬ作者さんからも反論ありそうな締めですが、
この18のeveファイルで描かれたテーマ、そして戦い抜いた人々、
特に最終話の最後の最後、あのシーンのブレイを『勇者』と呼んじゃいけない気がして……ブレイ(´;ω;`)
ネタバレは避けます。まだプレイしていない方は是非プレイして意味を確かめてみてください。