【死神遊戯】
製作:アン武さん
進行:〜8話まで

という事で、ひとまず落ち着いたのでシナリオ耐久プレイ企画に戻るでげすよ。
今回は企画元、すっかり第一線ライターの貫禄を身につけたアン武さんの死神遊戯をプレイ。
一応4話までは進めていたんですがデータが飛んだのと、企画の趣旨を考えて最初から。
流れで見てみると実に……うん、実に……。




シナリオ:C武装の使い方
まず全体を通して感じたのは、総じてスピード感。そして4話までとそれ以降の明らかな温度差。
というのも、公言してる通り救いのない鬱々系はちょっち苦手なんですよ。
そんな理由で4話までは、作者氏の技量によって面白いシナリオとして仕上がってはいるんですが、
「テンプレな欝を装飾して何になるの?」って非常に穿った印象があった事実を認めざるをえません。
一部の異端さんからはドMと呼ばれている僕ですが、主役や特にその周囲に苛立ちを覚えた人は少なからずいるのでは?
だからこそ藤崎さんが一層眩しく思えたのかも……なんて言い訳をしてももう遅い、ええ遅いんです。
5話をプレイしてしまった時点でそんな感想はかなぐり捨てざるをえない。
ここで起こった重大な出来事を転機として、ここに来るまでぶち込んだ後ろ向き、ネガティブ、鬱々はジャンプ台へと早変わり。
全てはこのための振りだったのか、なんてロジックが組みあがる前に身体と本能が理解する開放感と躍動感。
思わず叫びたくなるほどの勢いで噴き出すある種の前向きさと達成感。
そこに作者氏の味であるケレン味たっぷりの台詞回しが加わり化学反応を起こしてスパーク!
悪い事は言いません、これは是非一度味わっておくべきですぜ。本当にもう凄いっす。


さて、ここまでは主人公の『僕』にまつわる話。この辺は上記の通りまごう事なき最高の流れなのですが、
一方でもう一人の主人公格あるいは宿敵、親友であった正樹に焦点を当ててみるとちょいと造詣に難がある気も。
もちろん彼の心情は十二分に語られているし、どちらかといえば彼の肩を持ってしまう……6話までは。
というのも、彼は被害者であると同時に「加害者」であるという事実を忘れている。
『僕』が化け物になってしまった事に憤慨はしても、自分がその一因である事に苦悩はしない。
一方で『僕』は自分がアレな事を十二分に自覚している描写が多々あり。
息子の年齢すら覚えてなかった『僕』の父親と同じく、偽善者=トマトジュース以上の存在になりきれてないんです。
『僕』と正樹、ひいては天使サイドと教団サイドを善と悪の対比とするならば、現状だけを見ればちょっと失敗気味に感じます。
これを狙ってやってるとすればもう何も言う事はないです、白旗あげます。


とにもかくにも、最新話では純正復讐鬼であると同時に当て馬スメル漂う彼の登場や藤崎さんとの行き違いもあって、
一旦内面描写ターンに移行するのかなという感じ。あのノリを早く、もう一度と急く気持ちもありますが、
この辺こそ上手くやっておかないとダメなんだなぁという葛藤が、葛藤が。


演出:
シナリオにも言えることだけど、キレてるとしか表現しようがない。
見せ場、状況描写、更には小ネタの擬似ローディング画面に至るまで一切がスタイリッシュでガチの格好よさ。
どうにも褒め言葉が足りないのでプレイして確認してください。



戦闘:
敵味方共にネームドは圧倒的性能、ザコは本当にザコ。
そこに多種多様なボーナス条件を付加する事で楽しめるつくりにしている。
ただ、若干本作のレビューからはズレるものの懸念事項が一つ。
『僕の』行動回数3回+隠れ身コンボ……これ共闘用データベースに出していいのか、なんて。


雑感:
・件の5話イベント、プレイヤーに決断を委ねる方法はベネ。
 たとえ最初にどちらを選んだとしても、上手く『僕』へ感情移入する事ができる。
・6話、再開コマンドで○○の画像を再描画した方がいいかも。
・お前らのキックで地球がやばい。
・勝利条件の()に毎回笑う。
・トマトジュース。


総括:
どんよりムードに血みどろとあって必ずしも万人にお勧めはできないが、
同時に間違いなく一流のエンターテイメントであり、ここに更に何かが加わる気配も見せる化け物シナリオです。
いや実際これ以上成長したらホント手に負えないよこの人。
グランプリ開催が騒がれる昨今、これをプレイして結果を予想する人は多いはず。
……なんかもうライターとして本当にアレな言い方しかできないのが悔しいね。