【第7回SRC学園シナリオコンペ】
製作:別途表記

さて、コンペ感想2回目です。
今回の感想は【エンジ色のエポック】、【桜散る季節に人を妬むということ】の2作品。



【エンジ色のエポック】
製作:和光佳清

教師を続けるべく、13年前の自分を矯正するという試験を受ける事になった主人公、裕美。
しかし彼女が出会った過去の自分は、まるで記憶とはかけ離れた学生生活を送っていて……と、
主役キャラの固有設定を生かしたタイムトラベルモノのノベルゲー。ついでにマルチエンディング。
1stプレイではなんとかトゥルーエンディングにたどり着きました。


シナリオ自体はお題をしっかり意識したテーマで、タイムトラベルという設定を生かした話の運び方も面白いです。
Talkでなく画像による手紙の描写がそこに華を添えます。
『裕美』という存在の保全=合格、そんな声が各種バッドエンドや描写の端々に見え隠れしてたり。
少々惜しいのは現在の裕美の教師という職業に対しての想いをもう少し掘り下げていってほしかったところでしょうか。
それやるとどう考えても時間が足りないので仕方のないことでしょうか。
他には途中若干状況が分かりづらい場面があった事。手紙であれだけ手が込んでたので、
ここは表を描画して何かしら分かりやすくしてほしかったかも。

さて、特筆すべきはやはりインターフェース。シンプルながら1ヶ月で作ったとは思えない出来です。
右クリ早送り時、若干フェードアウトが遅くなるのが気にはなりますが、
それでもシナリオの雰囲気によくマッチしてます。

ともあれ、全体として見ればとてもよく出来たノベルゲーでした。
SRCのギミックと作者さんの独自性、そして実力が良く出ていたかなと。


シナリオ:☆☆☆☆☆
ギミック:☆☆☆☆☆
お題反映:☆☆☆☆☆



【桜散る季節に人を妬むということ】
製作:俳諧さん


毎回独自の路線をひた走る俳諧さん作。
今回も合格という明るい話題を敢えて逆の方向に捉えた面白い作品でした。
主役の賽が学園に合格した経緯を彼女の回想という形で綴っているわけですが、
そこに期待や希望なんてものが一寸も存在しません。
作中、終始彼女は善悪両方の『能力者』の掌の上で転がされる憂き目に会います。
そんな境遇こそがこの作品での能力者と一般人の関係そのものといったところでしょうか。
また賽や他の一般人にしても、明らかな偏見や過剰な恐怖心がちらほら見られるというか、
いや、このシナリオ独自設定かもしれませんが、
公式に当てはめると明らかにあり得なそうな状況をさも奴らはそうするみたいな形で描いてる点が。
狙って書かれているならこりゃ大した物です。


ギミックに関しては今回周囲の作品と比べると地味目で、相対的に評価は落ちてしまうかもしれませんが、
皆さんこれが基本的なSRCシナリオだってのを忘れないでください……と言いたくなったり。
まぁそれを差し引いても、作中描写で光る細かな技の数々、
『望まぬ合格』という今回誰も目を付けなかった点に着目した氏の独自性は尊敬に値します。
今後もこういう路線の作品を期待してます。


シナリオ:☆☆☆☆☆
ギミック:☆☆☆
お題反映:☆☆☆☆☆