エイプリルフールネタもやらないとかバカなの? 死ぬの? とこんばんは。
予想以上に時間がかかってしまいましたが、
第7回コンペ作品最後の『3』作品、レビュー行きます!




【最果ての楽園にて】
製作:パンさん


既にすっかり常連さんなパンさんのシナリオ。
毎回高レベルの刺客を送り込んでくる氏ですが、今回も良い意味でやられました。
後述する演出技術の高さもそうなのですが、特に眼からうろこだったのが舞台設定。
乱暴な言い方をすれば、雑多な学園の設定を一度全部取っ払っての作品作り。
結果として初見さんが設定に煩わされる事もなく、純粋にドラマに入り込んでいける方法をとってます。
このタイプの欠点として本来の舞台が持つ『らしさ』が失われてしまうという点が挙げられるのですが、
だからこそでしょうか、今回は驚くほどまっすぐな王道ストーリー。
また前々回の『7thDay』や前回の『テメェら全員死刑!』などの伏線や設定をふんだんに使ったシナリオと比較すると面白いです。
主人公サクヤの成長をしっかりと描写し、チテイ人達との交流も頬が緩むくらい和やかに、時に切なく。
そうしてプレイヤーを引きずりこんだ末に、その全てを収束させた上で提示される結末は素でほろりといきそうになったとか。


さて、上記のようにシナリオ面は非常に優れているのですが、
それを2倍にも3倍にも面白くする氏のお家芸、ギミックに関して。
今回の印象を一言で言うと『豪華』。
短〜中編くらいのシナリオで使う量の画像演出を一話そのためだけに突っ込んだ、そんな感じです。
その上でシーンを分かりやすくする細かな演出も利いてたりと、描く事と組む事両方の技術を持ちえた人が、
本気を出すとこうなるよ、という見本じゃないでしょうか?
とどめにエンディングのBGM。恐らくはこれを持ってくるために色々と奔走されたと思うのですが、
それだけの価値はあると思います。作品の質に負けず劣らずです。


お題に関しては他より更に『成長』が前面に押し出されているような感覚はあったのですが、
『合格』の象徴たる『桜』をうまく使ってるなぁと、細かな点で感心してしまいました。
総括するなら、あえて様々な部分をおまけ程度にとどめ、見せるべき物を絞って叩きつけた作品。
その威力はプレイして肌で感じるべし、といったところでしょうか。


シナリオ:☆☆☆☆☆
ギミック:☆☆☆☆☆
お題反映:☆☆☆☆



【総合格闘武術能力大会】
製作:狼二世さん

総『合格』闘、つまりはそういう事だ。
比較的キャラ数を詰めた印象のある今回のコンペ作品の中で、唯一といっていいお祭りゲーを持ってきてくれました。
大会を勝ち上がり、味方を増やしつつ名を挙げろ! 分岐もあるよ! ……と、
ある意味コンペの締めくくりとしては上記の【最果て〜】と別方向で双璧をなす作品だったと思います。
ワイワイガヤガヤ多種多様なユニットを扱う、単純な楽しさがありましたね。
その分某スパロボの様に主役周りの動きは控えめなのですが、それでも見せ場で活躍したり、最初と終わりをきちんと展開したり、
結構お題に即したドラマが展開されていたと思います。コンペ作品のモブ顔は本当にダークホースです。
欲を言えば戦闘メインのシナリオだったので、名前だけでなく能力に関しても数種選択できる方式が欲しかったかも。
それと若干の難易度調整が欲しかったでしょうか。治安組織の騎士団より情報屋の広耳堂がユニット的に厄介なのはなんなんだろう。まぁ、これを作者さんに言うのは酷ですが。


ともあれ、どうしてもシナリオ面の構築が難しくなりがちなこのテのお祭り作品で、
ドラマもやりつつ騒ぎつつ、と結構良いトコ取りの作品でした。
特化された部分はないものの良いレベルでまとまっていたと思います。
あと製作事情の話になりますが、最終日の修羅場は本当にお疲れ様でした。


シナリオ:☆☆☆☆
ギミック:☆☆☆☆
お題反映:☆☆☆☆


【???】
製作:???

作品名は敢えて隠します。締め切り当日に製作を始めたという某氏が滑り込ませてきたブツ。
蓋を開けた瞬間、いい意味でこの人馬鹿だと思いました。
多くを語る事はしませんというか、出来ません。そういう作品故におまけという位置づけにしたのですが、
恐らくプレイした方ほぼ全員が驚愕したんじゃないでしょうか。
未プレイの人は他作品をクリアした後、インデックスを探してみてください。
多分想像通りだったという人はいないはず。


いや本当に予想だにしない作品でした。ちなみに僕は216秒で。


シナリオ:☆
ギミック:☆☆☆☆☆(☆)
お題反映:☆☆


総括:
さて、以上でコンペ作品全ての感想を書き終わりました。
今回は非常にかぶりが危ぶまれる内容ゆえに、直接的なお題の使い方は少なかったように感じます。
ある種『成長』というのが一番テーマとして相応しかったかもしれません。


とはいえ多種多様なアプローチ、総じて質の高いシナリオの数々。
プレイヤーを楽しませる、驚かせるというゲームの本質を考えれば大成功と言える回だったと思います。
また、個人的に嬉しかったのは学園在住者の、特に最近シナリオをリリースされ始めたお2人が参加してくださったこと。
現在学園ライターとしては一段落といったところの僕ですが、
後続の人々の活躍というか、こういうものを開催し続ける意味というものを再認識できました。
なんだかえらそうな話になりますがね。


ともかく今回参加してくださった製作者の皆様。一ヶ月本当にお疲れ様でした!
羽を休めたり次の作品に取り掛かったりと、現状も色々だと思いますが、まずは数週間後の感想公開をお楽しみに!