【第三回SRC学園シナリオコンペ】
そんなこんなで公開されました、学園コンペ三回目。
さて、今回僕も参加させていただきましたが……、
なんというか、今更水準の高さにビックリしてます。
以下他の参加作品の感想となりますが、あらかじめ断っておきたい事三つ。

率直な感想を書きたいので、自分の技量は基本棚上げ、ごめんなさい。
それともう一つ、プレイ後の閲覧を推奨です。
手前味噌な話になりますが、
それを抜きにしてもネタバレが勿体無いレベルですので。
最後のもう一つは察してください、そりゃないよいくらなんでも。

(こういう事は褒められたものではないと某氏から指摘を受けました。
今回彼の参加に個人的に憤慨して「いる」ので手をつけていなかったのですが、
参加者としての立場から、なるべく公平な評価ができる様心がけプレイさせていただきます。)


・【駆け抜けた、その先に……】(木藤さん)
やさぐれ少年が、走る事でかつての自分を取り戻していく。
なるほど、王道……って、えぇーーーッ!? そんな感じの流れでした。
書きたい事は素直で好きですが、心理の変化がやや唐突な所が少なからず見られます。
特にマラソン終了後の今際の際、どうして主人公からその台詞が出たのか?
これに対する答えがぼやけてしまっているのが凄く残念。
あるいは、ヒロインを「主人公を見る視点」としてだけでなく、
彼女の目指す物をより掘り下げていけば、一つの結末として納得が出来たと思います。

戦闘は評価性で、途中特殊条件が追加されたりと楽しめる工夫がしてありました。
動かし方をミスって何度かリスタートとクイックセーブを繰り返しつつ、なんとかA取得。


・【シロイユメ】(高野M明さん)
便利屋とその依頼人、似た物同志の二人のマラソン
91kbと、今回の作品中一番ボリュームがあるんですが、
どこか削れるかと言うとノー、無駄がなく、構成の上手さが群を抜いてる。
鳥肌の立つ山場と、寂しいけれど、確かな救いを感じる結末は必見。
自作の一枚絵やマップチップを使った見事な背景で、視覚的にも大満足。

惜しむらくは、戦闘面がやや作業+運任せだった所でしょうか。
それと役割を考えるに、イッシーはモブ的に処理しても問題なかったかなと。
出番増やす余裕は無いでしょうし。


・【SweetsDays】(ryu-kさん)
正月太りを解消すべく、ダイエットのために立ち上がる三人のお話。
オーソドックスなギャグシナリオで、「この人達、何でここまでマジなの?」
という、登場人物達の「ずれた本気」を楽しむシナリオ。
チャップリンの喜劇的とでも言おうか。
謎のナレーターによる斜め上なナレーションがその傾向に拍車をかける。
いい意味で、軽い気持ちでプレイして軽い気持ちで笑うには最適な一作。
上のシナリオから順々にプレイしている方は、恐らくここで一息と言った感じ。

……ただし主役がシロユメのあの人なので、
SRC学園モノがある程度のパラレルで構成されていると割り切らないと
素直に笑えない……かもしれない。
それと戦闘は楽しかったけれど、もう少し敵数を削っても問題なかったでしょうか?
あとパロディ耐性(軽)が必要といえば必要、ネタ元を考えなくても笑える工夫はなされてますが。


・【42.195kmの音色】(和光佳清さん)
平成のお節介男が、少女の為に一肌脱ぐ!
ヒロインに協力しようとする主人公の行動が少し唐突な印象。
彼女の走る理由が上手く表現されてるだけに、その辺が少し残念でしょうか。
いや、一行目で書いてある通り、お節介と割り切ってしまえば問題ないんですが。
ともかく、そうこうしている内に現れる敵役の人々。
悪意ではなく本人の為に対立してしまうという構図は好きです。
学園モノという事を考えると、勧善懲悪よりしっくり来るというか。

そして最後の展開は色々な意味で救いがねぇ、ゲフッ。


・【桜花道夢の途中】(いぷしろんさん)
お前が好きだ、付き合ってくれるまで挑み続けるぜ。
そういう意味のマラソンシナリオ、主人公が実に一途でした。
相手は男だけど、それすら一途さを示す材料と化している、BLにありがちの嫌悪感は無し。

ただ気になってしまうのは、中盤、主人公の敵に対する暴言。
悪口言うなんて最低、って意味ではなく、主人公の人格と台詞が剥離してる印象。
ぶっちゃけてしまうと、主人公ではなく作者の台詞にしか聞こえなかった。
逆に直後の叫びが実にらしいと感じるのは、
彼がそういう生き方をしているのがプレイヤーにきちんと伝わっているから。
問題の台詞を吐き出すに繋がるもの(毒を吐く性格、あるいは毒を吐くまでに至る苛立ち)を、
提示する必要があったんじゃないでしょうか。

戦闘は苦労しつつもなんとかクリア。
メタ台詞に関しては気にならない方なので、楽しみました。


・【敵と書いて友と読む】(狼二世さん)
ラソン大会、あいつに勝つべく特訓だ!
この人の強みは世界観や設定の面白さを凌駕する、人と人の交流の上手さにある。
展開はオーソドックスですが、流れの自然さや、
個性豊かな登場人物全員に好感がもてるのは素晴らしい。
だからこそ最後の締めからその先を想像したくなる、というか。
ちょっとだけ気になったのはカレーの人の台詞がほぼカレーな事、
それも個性だけど少しだけしつこかったかも。

戦闘は動かし方のヒントが欲しかったかもしれません。
何度かゲームオーバーになりつつクリア。

ほのぼのとした良いシナリオでした。


・【11】(フォルさん)
1人の前向きな少年と、1人の後ろ向きな少女の交流。
1+1ではなく、1と1が一緒に並ぶ、そんなお話。
1話を通して、全てが完全に解決したわけではないけれど、
決して消化不良ではなく、続く未来を感じさせてくれます。
ただ、黒幕のあの人に関してはやや蛇足感が。
感覚的なもので、二つの差がどこにあるのか言葉に出来ませんが。
……続編の有無?

そしてこの人は本当に猫が好きだなぁ。
僕も好きです。


・【Runner】 (海斗さん)
自分が養う孤児の為、大きな目標に立ち向かう事を決意した老人の話。
一コマ一コマの描写自体は丁寧に進められているのですが、
1話完結でやるには色々な物を盛り込みすぎな印象。
おいしい料理が次から次へと際限なく出される状況、といいますか。
出さなくていい料理を出さなければ、気分よく満腹にさせられただけに残念。



・【マラソンってなあに】(らきとさん)
って、こう来きますか。
らきとさんという人の発想力に驚かされた作品。
モンスター使い熟練度MAXとか、そんな感じ。
戦闘はありませんが、ゲームとして何度でも楽しめる点は、
作者さんのスタンスを端的に表してます。
10週ほどして全エンディング制覇……した筈。

あとスライモ可愛いよスライモ。


・【マラソングラフィティ】(むすすだ式さん)
細かい事はどうでもいい、勢いで突っ切れ!
でもまっすぐ走る事だけは忘れんなよ。
圧倒的な数のアイキャッチと、
出てくるキャラクターの破天荒さに目が行ってしまいますが、
それらがあるから、ラストの展開がしっかりと生きてくる。
芯がない様で確かに存在する作品でした。
主人公と敵(便宜上)、二人の考えどちらにも共感できてしまうのは凄い。

内輪、というよりは学園は凄い所だぜと見せ付けるのが目的だったと思われます。
テンポの悪さが少し気になりましたが、ラストの展開を考えると、なぁ。
削れるのか、削れないのか、増やすべきなのか。


・【一般人、能力者の事情】(おずまんさん)
能力者嫌いの主人公が、結果的に1人の能力者を救う話。
人形劇などの細かい所だけではなく、
シナリオ全体の描写が丁寧で、主人公の身の上や考えきちんと提示されているので、
ただ口が悪いだけじゃなく、本当は優しい人間だというのが伝わってきます。
【11】と同じく、根本的な所は変わらないけれど、
少しだけ前に進めた感じが出ていて良かったです。
というか、一番前に進めたのはヒロインなんだろうなぁ。
主人公だけに限らず、登場人物全員が本当の意味で優しい人達だったのが良かったのか。
「ごめんなさい」が「ありがとう」になると言う展開は凄く好き。

締めの一言、主人公もしくはヒロインから何か欲しかった気もします。
全体的に見て凄く上手い人だけに。


【ネームレス・ディザイア】(彩華さん)
って、こう来きますかPart2。
この人は第二回でも変わった視点から攻めてきましたが、
今回も頭上から奇襲してくるシナリオ。
コンペ参加者の心情を、登場キャラクター達が見事に代弁している。
では、主人公=プレイヤーに関しては?

このシナリオ、全作品の最後という収録順があまりにも絶妙すぎた。
上からプレイしていき、最後に裏話というか楽屋ネタがくる事で、
シナリオの持つ魅力が十二分に引き出される結果に。

プレイヤー=主人公の図式。
それは他の作品の出来によって左右される所が大きい。
プレイした人が今回の参加作品を面白いと感じてくれたなら、
主人公は十分プレイヤーたりえる筈。