若干間が空きましたが今日もコンペ感想を。



【OVER THE LIMIT!!】 製作:シャアペンさん
剣道部に所属する兄と、それを超えようとする妹のお話。
障害としての親族・兄妹ネタはやはり鉄板か。限界と言うテーマを明確に表現していたと思います。


序盤は試合風景に徹して、超えるべき対象である兄、九条直樹の強さと、
妹の有里の焦りを表現する事に力を注いでいる。
あの手この手をことごとく受け流す兄の強さはしっかり表現されているが、
一方で人形劇、こと戦闘シーンで重要なテンポが損なわれている感。
有里の心境を代弁しているサブキャラクターがいるのだから、
彼女のセリフを多少削ってでも流れるような戦闘シーンの構成に力を入れるべきだったかと。
他のシーンで十分に心中を吐露しているわけですしね。


戦闘パートも悪い方向で長くなってしまっている。
苦しい状況を出すための仕様であるのは分かりますが、
強揃いの味方に延々とザコキャラが出現、突貫しては切り捨てられる状況は苦しいというより面倒。
ただ、プレイアビリティとプレイヤーに感情移入させる構成の兼ね合いは本当に難しいわけで、
シャアペンさんに限らず、このパターンをうまく成功させられる方はあまりいないんじゃないかと。


上記の通りテンポの悪さが足を引っ張っている印象はあるものの、
絶体絶命の状況を経て恐怖や焦りを乗り越えていく王道パターンはスッキリしていていい感じ。
勝利する事は出来なかったものの、有里の成長を実感できたのは良かったです。


シナリオ:☆☆☆
ギミック:☆☆☆
お題:☆☆☆☆☆



【幕間劇】 製作:匿名さんB


短いながらも主題を描ききったシナリオ。
超えられない限界をはっきりと描いたと言う意味では今回のコンペで確かな立ち位置を得ている。
淡々と描かれ、淡々と突きつけられた現実とでも言おうか。
用意された会話、名前、BGM、画像。全てが結果を導き出すためだけの物でそれ以外はばっさり。
あとは、世界観の多くで引用されてはいるものの、いまいち軽視されがちな
能力者と非能力者の間にある壁をこういうパターンで描いた点は好きですね。


難点は、これがコンペでなければ「なんじゃこりゃあ」という評価は免れない点か。
結果を書くために必要なもの以外(戦闘すら)全て削った結果、5kbという軽量シナリオ。
一本でリリースするには話の良し悪しは別として短すぎるかと。
ある意味、コンペという特性をフルに生かしたシナリオ。作戦勝ちです。


あとすいません、デフォBGMには気づきませんでした。突っ込んでないので。


シナリオ:☆☆☆☆
ギミック:☆
お題:☆☆☆☆☆


【騎士としての在り方】 製作:回天さん

治安維持の生徒会「騎士団」に属する新人、内藤高志君の成長を描いた青春劇。
限界をあえて超えず、自分に出来る範囲で前に進んでいこうとする内藤君。
彼を取り巻く先輩二人もそれぞれの方法で後輩を支えようとしている、といった具合。
特に先輩の一人、城島さんは本来悪役として作られたキャラクターなんですが、
このシナリオではそれを意識させない良い先輩でした。
変に穿った人物関係を作り出さずに純成長劇とした結果、
このシナリオはなんというか、本当にまっすぐで素直な出来になってます。


さて、このシナリオで評価が分かれているのが戦闘シーン。
というのも、出てくる敵は意図的に城島さん一人で何とかできる相手で揃えられてるんですね。
強いて言えば前半の敵が相性ちょっと悪めですが、本人の言うとおり些細な事。
これじゃあ内藤君が戻ってきた意味がないじゃないか、と。


これに関しては、意味がないからこそ絶妙と言わせていただきます。
というのも、内藤君はシーン内で『戦う義務を持たない』状態なんですよ。
自分がいてもいなくても状況的には問題ないのに、それでも敢えて戦うという選択をしたことで、
彼がしなければならない事ではなく、彼が出来る事を描く事ができたんじゃないかと。


まぁ、そういう具合で、シナリオとして突出した点は無いんですが、
ところどころ光る点が見られる作品でした。
作者さんもライターさんとしてはまだ新人ということで、
主人公にうまく感情移入して書ききれたんじゃないかと勝手に邪推しているわけですが。
今後に非常に期待できる方だと思います。あと初心忘れるべからずとか勝手に反省。


シナリオ:☆☆☆☆
ギミック:☆☆☆
お題:☆☆☆☆☆