お待たせしました。第6回SRC学園シナリオコンペ、
現公開分ラストまで一気にいきます。長いのでお覚悟を。




【テメェら全員死刑!!】 製作:パンさん

ワシのネタの引き出しは108まであるぞ、と言わんばかり、
前回どんより欝気味話を描いてくれたパンさんがハイテンションギャグで上陸だ!
恐怖の番長との約束まで@30分! 一秒遅刻でタイトル通り! という非常に分かりやすい限界に
振り回される三者三様の物語。畳み掛ける様に来る想定外の方向からギャグ=状況に
プレイヤーもいい意味で引きずり回されっぱなし。と、言うかこれ以上言葉で語れる事は無い。
そもそもギャグ部分をまじめに考察するのは無意味なので、プレイして笑えとしかいえない。


しかしながら構成は巧みで、それぞれが完璧に独自色を出せるキャラクター選択にはじまり、
ハイテンションでライトなノリを崩さない程度にエログロさと、キャラクター達をギリギリに締め上げる切迫感。
その上であらゆるシーンを伏線として数々の荒唐無稽な荒業を破綻無くつなげていき、
ラストに繋げる手腕は正直恐ろしい。何だろう、ただ巧いとしかいえない。
でもおまけの助っ人は室伏ばりに投げすぎだろ、ゲシュタルト崩壊起こすよ!
なんというか、本来例えるのはアレな事なんですが、分かる人は「清村君と杉小路君と」を
想像してみてください。あんなノリです。大好物でした。


基本的には読み物でゲームではないんだけれど、演出面はこれ紐解いたらものすごい宝の山じゃなかろうか。
特にこのシナリオで使っている演出のほとんどは書き下ろしでなく出来合いのもので
視覚的に強く訴える効果を持つものばかりなので、あらゆる境遇のライターが習得しうる。
でも良い子のみんなはモザイクを真似しちゃだめだよ!


本筋からおまけまで怒涛の展開が続く一作。今回のコンペで一番お勧めです。


シナリオ:☆☆☆☆☆
ギミック:☆☆☆☆☆
お題:☆☆☆☆☆



【[/]】 製作:相原勇人さん

前のパンさんの話に引き続き、またしても読み物系。しかしながら方向性は正反対。
インターフェースに関してもビジュアルノベル的に構築していてとてもお洒落。
ただそれらは副次的なもので、やはり真骨頂はシナリオにあるかと。
全てを受け入れてくれる少年を、彼に恋した二人の少女の視点から描く……と書けば
ラブストーリーぽいですが実際はエログロ真っ黒仕様。どいつもこいつも病んでいて、
常識では否定されるような嗜好を持つがゆえに肯定してくれる少年に惹かれていきます。


このシナリオでの「限界」は言うならば「個人と個人の境界」ってトコでしょう
作品の根幹にかかわる「少年の目的」は断片的に明かされていきますが、
結局明確な答えは明かされないままなので、自分なりの答えで納得する仕様となっています。。
少年も自分を救ってくれた人(同時に自分を虐待した人)を肯定したいが故に
そんな答えとそんな思考に至ったんだろうけれど、結局一番受け入れたかったのは
誰かの慰み物としての自分だったように思えます。
そういう意味で彼は今も自分と、その副産物として誰かを肯定し続けているワケで。
彼と彼に取り込まれていった人達ではなく、それを拒否した少女を最後の締めに据えたのは
そういう意味では正解かな。


主役の少女達の思考、嗜好は話中にて語られた点からある程度考察できるのですが、
サブキャラクターの沖宗さんに関しては設定(*)ありき過ぎて僕も最初ワケワカメでした。
そして今も多分分かっていない。まぁ、人の内側に踏み込むのは恐ろしい事と伝える役割、て事で。
読解力を要求される点ではベニヤ板さんのシナリオと近く、
そしてやはり最終的にお題はたどり着くタイプの物なので、作中での印象はやや弱め。
こういう路線はお題を訴えすぎると反発が生まれてしまう気もするので、仕方なくはある様にも思えますが……。
今回は本当に脳みそ使うシナリオが多くて大変ですが、それも結構楽しくあったり。


(*)彼女の能力は無差別に周囲の思考や感情を把握してしまうもの


シナリオ:☆☆☆☆
ギミック:☆☆☆☆
お題:☆☆☆


【夢密室】 製作:俳諧さん

SRC島のホテルにて殺人事件発生! 四者四様の容疑者達。
お呼びのかかった探偵、西津志鶴が事件に挑む! と、作者氏お得意のミステリー系シナリオ。
マルチエンディング型で全てのルートにクリア判定がありますがトゥルーエンド以外は全て■■。
全ルートをプレイした時点で泊まりたくないホテルNo1になりました。
……すごい宿泊客だ。


物的証拠ではなく証言を総合して想像する事で答えを導いていくタイプ。
短編なのでそれほど必要な情報と選択肢は少ない。
僕はミステリー系に関しては畑違いでして、これをどう評価すべきかはちと悩みます。
ただ、序文が序文だけに少なからず肩透かしはあったかと。
限界に関してもオープニングで一言だけと取ってつけた感が強いのもコンペ的にはマイナス。


ただこのシナリオで一番納得がいかなかったのは被害者が幽霊として出てきちゃう点。
確かに関係者の中にも人外はいるけれど、主軸にゴーストが絡むのは
ミステリーと銘打っているだけに違和感がでかいです。
ホラーも氏の得意分野ではあるのですが、今回は美味しい物二つ混ぜたら味が死んだ的な。
氏の他シナリオを楽しんできた身としては、今回はちょっと首を傾げてしまいました。
次回に期待で。


シナリオ:☆☆☆
ギミック:☆☆☆
お題:☆


【総評】
と、大分時間がかかりましたが、現公開中の作品レビュー完了。
個人的に一番面白かったのは上記の通り【テメェら全員死刑!!】。
次点がほぼ横並びの状況なのでかなり悩んだんですが、
敢えて、清涼剤的な役割を果たしてくれた【騎士としての在り方】をチョイス。
敢闘賞に【失恋戦隊業恋者】ってトコでしょうか。チャレンジャー的な意味で。


今回は全体のレベルも高く、お題も様々な面からアプローチがなされていた反面、
読み物系に数が偏った印象ですね。それと、製作者としては公開当初のゴタゴタは本当に申し訳なく。
アンケートなどでもレギュレーションについてのご意見をもらっていますので、
そちらの方を次に反映していけたらなと思っています。
ともあれ、ライターとプレイヤーのみなさん。本当にお疲れ様でした! 良ければまたごひいきに!


そして、もうちょっとだけ続くんじゃ。